011028
物騒なタイトルであるが、どうも私は妻を山中で殺したと思われたようである。 以下はあくまでも私の勝手な推測も含んだ事実である。 ある日、私は下山して車を停めてある所までしばらく車道を歩いていたが、途中直売所の前に並べてあるリンゴがおいしそうだなあと眺めながら、その店の前を足早に通り過ぎようとしたら、そこの女主人が、「こんにちは。一人ですか?」と聞いてきた。 家に帰ってのんびり風呂に入っている最中に気がついた事だが、この時、私は完全にこの女主人に、疑われていたのである。 もう夕方の4時半を過ぎて暗くなり始めていたので、確かに私は車道を急いでいたし、一人かと聞かれて、素っ気なくそうだと答えたのも、疑われる一因だったに違いない。 その女主人は、「今朝、すぐそこに車を停めて、登って行った夫婦がまだ戻って来ない。」と言った。私は、山頂に着く手前ですれ違い言葉を交わした夫婦だと、直ぐに気が付いた。その夫婦は、このあたりに車を停めて来たので、またそこに戻るのだと言って、私よりも20分前に下山していた。 この女主人の話だと、この店の前の道路を挟んだ小学校の校庭に、その夫婦は車を停めていた。そこの駐車スペースは、高台にあるために車道からは見えず、通りすがりの者には駐車出来るなどとは全くわからないような場所である。だから、きっとこの夫婦は、駐車の際に多分この女主人と色々と言葉を交わしていたはずである。 私は、「私も、落葉のせいで踏み跡が不明で道を間違えたが、その夫婦も迷っているかもしれない。時間的には、とっくに私よりも先に着いていなければいけないはずだ。」と答え、内心、自分が疑われているとはつゆ知らず、遭難したとすれば私が多分最後に言葉を交わした人物だということで、捜索に加わらなければならない、とお人好しにも考えていた。 その女主人は、その小学校の校庭に停めた車が有るかどうか確認すると言って、見に行ったところ、すでに車はなかった。結局、その夫婦は無事下山して、とっくに帰ったようである。私への疑いも晴れた。 家で、無事な妻に、私の推理を話したら、テレビの見過ぎだと言われた。 |