病気のおかげ。 病気がきっかけで、変わったという人は世の中に沢山いると思う。私もその一人だろうと思う。十数年前に病気になり、数ヶ月入院をした。退院後もしばらく無理が出来ない状態が続いた。 しかし、病気のために失ったものも多かったのだろうが、病気のおかげで得たものも多かったと思う。 例えば、その一つは本である。もともと本は好きな方であったが、最初に入院したときに、会社の上司が見舞いに持ってきてくれた長編の本が私を更に本好きにし、興味の対象を大きく広げてくれた。 それからである、私の本の嗜好が一変したのは。長編や歴史物に興味を持ちだした。三国志の次に何を読もうかと考えたが、せっかくの入院生活だから、退院したら読むのが難しいと思われるものを読んでやろうと思い、徳川家康全26巻に挑戦することにした。最初はさすがにためらったが、これも読み出すと止められなくなった。読んでいる途中で、幸か不幸か退院となったが、通勤しだしてからもどんどん読み進むことが出来た。徳川家康のおかげで日本の歴史にも関心が強くなった。(今だから話せるが、高校時代は日本史は大学入試科目として選択しなかったので、一度赤点を取ったことがある。) その後、新書太閤記(11巻)、水滸伝(4巻)、小説十八史略(6巻)などを読んだ。十八史略は、別の人がまとめたものも図書館から借り出して何種類か読んだ。 中国の3大古典は、三国志、水滸伝と紅楼夢だと、中国の人から聞いた。紅楼夢をいつかは読もうと思っているが、この本は図書館でしか見かけることが出来ない、難しそうな(内容は柔らかいのだが)本である。また、新平家物語などもいつか読みたいと思っている。 そのような経緯をたどって、現在は吉村 昭の本に熱中している。納得するまで事実を丹念に調査して書き上げられている、限りなく史実に忠実な本で、読んでいるとどんどん引き込まれてしまう。事実は小説より奇なりと言うが、史実を小説で読むのは更に興味深く、新たな発見がある。推理小説に戻ることは、多分ないだろうと思う。 その上司には、今でも感謝をしている。 |