台風一過の夕焼け (01/09/11)



昨日から今日にかけて大型の台風15号が関東を直撃した。
今日は、朝の出勤時と昼前の外出時の2回もびしょ濡れになってしまった。靴の中まで濡れてしまったが、外出先のため靴を脱いで乾かすことも出来ず、一日不快な思いをした。

しかし、昼過ぎからはやっと台風も過ぎ去り、徐々に天気が回復してきた。夕方、帰宅時に駅に降り立ったときはすっかり雨は上がっていた。でも、空の様子がいつもと全く違っていた。厚い雲がまだ西の空のあちこちに残っていたが、それらの雲の合間からの夕焼けが、いつも見る夕焼けとは全く違っていた。

西の方向だけでなく西の方向を中心にほぼ180度にわたって、空が非常に鮮やかな朱色に染まっていた。墨色をした雲の陰と朱色に染まった空の醸し出す最高の自然の美であった。今まで見たこともない夕焼けであった。

駅の改札を出る手前あたりから、その夕焼けが真正面に見えていた。思わず周りの人にも、声を掛け教えたくなるのを我慢した。なぜなら、声を掛けなくてもその光景は皆の目に飛び込んでくるから。改札を出た直ぐのところは全面が窓であったので、急いで窓に近寄り夕焼けを眺めていた。デジカメを持っていなかったことが、非常に悔やまれる。

しかし、何か変だった。周りの人を見ると、夕焼けを一瞥すらせずに、皆そそくさと駅を出ていってしまった。窓際で立ち止まったのは、私ともう一人の若い男性の二人だけであった。私は、なぜこんな素晴らしい夕焼けを見ないのかと、声を上げたくなった。

駅の階段を下りて、交差点で信号待ちをしている時も、まだその美しい夕焼けが見えていたが、西の空を見ている人は私以外には誰一人として居なかった。
私は、誰かにこの夕焼けを見せたくて、家に電話した。娘は見たと言っていた。

美しいものに接しても、感動しなくなった日本人に非常に寂しさを感じた。毎日の生活に忙しく、夕焼けを見ている余裕も無いのだろうか。そそくさと、家路につく家庭には何が待っているというのだろうか。こんな素晴らしい夕焼け以上のものがあるのだろうか。今日はこんな素晴らしい夕焼けを見た、と家族に話をする心のゆとりが欲しいものである。

しかし、今日見た夕焼けはあまりに美しすぎて、また幻想的で何か不吉な事が起きる前兆のようにも思われた。

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