槍ケ岳への道−3 (燕岳・槍ケ岳山行) (01/08/19)



とにかく歩き続けるしかなかった。

私の前後には今朝同じ燕山荘を出発した人が4、5人いたが、濃い霧のためほとんどその姿が見えない。途中で休んでいると、後から来た人が追いついて来たがまた直ぐに間隔が広がる。雨は相変わらず降ったり止んだりを繰り返し、空はいつまでたっても晴れる様子を見せない。ヒュッテ西岳やヒュッテ大槍で休憩しているときにはまた雨脚が強くなってきていて、今日はもうここに泊まってしまおうかと言う気持ちが胸をよぎった。

しかし、今日中に槍ケ岳まで行っておかなければ、明日の上高地への行程がまたきつくなる。何とか気持ちを奮い立たせ、雨と疲れで重くなってきた足を一歩一歩前へ踏み出し歩き始めた。
こんな時は、遙か遠くに目的地が見えない方がいいのかも知れない。あまりにも目標が遠いと、気持ちが萎えてしまいそうになる。東鎌尾根の雨に濡れた岩場を、滑らないように慎重に歩く。疲れたときに事故を起こしやすいので気を引き締め、槍ケ岳を目指した。

槍ケ岳まであと800mと岩にペンキで書かれた表示を見たときは、やっと着いたという気持ちだった。ところが、いくら歩いても槍ケ岳は見えて来ないし、次の何mと言う表示も現れない。2,300m以上は歩いたと思われる頃にやっと700mという表示が見えた。

丹沢を歩いていて分かったことだが、ある目的地まで何mという表示は必ずしも道のりを表していない。地図上の直線距離を表しているところもある。ほとんどの場合、実感としては表示の距離よりも、長く歩いていると感じていると思う。疲れによって長く感じる所もあるのかも知れないが、このような表示は必ず道のりを表示して欲しいものだ。

槍岳山荘への最後の200mは本当に長かった。400m以上は歩いたのではないだろうか。途中2,3度休んだほどである。それでも、やっと槍の肩に着いた!!
結局、燕山荘から槍の肩(槍岳山荘)まで10時間半を要した。

しかし濃い霧で槍ケ岳はおろか山荘の周囲さえもほとんど何も見えない。雨もまだ降っていた。こんな天候で、槍ケ岳の山頂に登れるのだろうか。明日もこんな天候が続くのだろうか。槍ケ岳のふもとまで来ておきながら、全く何も見ることが出来ずに上高地へ下りることになってしまうのだろうかと、着いたばかりの山荘の前でしばらく佇んでいた。

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